何で栃木県か?一風変わったワイナリーだったので興味がわいたのと
カルフォルニアのバークレー校出身の醸造家が作っていると聞いたので・・。
これからブドウを育ててワインを作ろうってんで時間が許す限り、
いろんな小規模ワイナリーを訪ねてみたいと思っている。
このワイナリーは実は結構有名。(実は訪ねてから知ったのだけど。)
最近日本で開催されたサミット(沖縄と洞爺湖)の晩餐会で採用されたワインを造っている。
別に誰がどこで飲んでいても自分には関係ないけどね(^^)
一番特徴的だったのは、そもそもワインを造るために設立されたワイナリーではないということ
金稼ぎ一辺倒の”企業”ではなかった。それが良かったよ。共生の価値観を感じた。
世の中に必要とされておらず、世の中を必要としていない知的障害を持つ人たちが外に出て働く場を作るために、それも50年も前に、知的障害者のクラスを担任していた創設者が山を切り開き、原木を担いで3ヘクタールの農園を作った。同時にこころみ学園という全寮制の学校施設とあわせて。
創始から10年くらいたって、ブドウが育ち始めて食べきれないからワイナリーを作った。酒税法の関係で学校はお酒は作れないから別組織にした。資金は園長の持ち出しと父兄からの寄付。ワインありきの場所ではないんだ。人がいてワインが付いてきた。たまたま、水はけのいい荒地があった。それがブドウ栽培に向いていたんだそうだ。
傾斜38-45度の南西向きの急斜面に約1200本ものさまざまなブドウが育てられている。一番上まで上ってみたけど、相当傾斜がきつくて息が上がってしまった。不覚!
見学をさせてもらったのは、農園、ワインセラー、スパークリングワインの瓶詰め作業、それと醸造タンク施設。やっぱり作業系は指先がむずむずする。もっとゆっくり手伝いたかったよ。
今の農園の作業はブドウの木の皮むき、剪定、剪定した枝拾い、棚の補修等など。フィールドで出会ったSさんと連絡先を交換してお互いお手伝いができるように話ができた。彼はブドウの買い付けもやっているらしい。
今度、一緒に行きたい人募集!無農薬有機でブドウを育てたいと話をしたら、「気長に待ってます!がんばって」と言ってくれました。一緒に働いていた園生たちも「またね!がんばってね! また来てね!」と姿が見えなくなるまで手を振ってくれた。かなりほっこり。なんかこんな出会いがあるからお出かけって楽しいよね。
実は、もうちょっと突っ込んだ栽培技術を知りたかった。そこは残念。剪定の話とか、棚の考え方とか。
除草剤を使っていないこと。有機肥料を与えていること。減農薬であること。そこら辺は説明してもらった。
やっぱりボルドー液は使っているらしい・・・。
それと、バラの木がぶどう園のあちこちに植えてあった。うどん粉病などの早期発見に役立つらしい。
比較的軽量な平棚の農園には枯れたせんだん草やギシギシ、オオイヌノフグリなどなど見慣れた春の風景が足元にも広がっていた。
2年前に無農薬を試したら虫にやられて全滅状態だったらしい。うーん。
どこかに無農薬のブドウ農園はないかなー?欧州ではバイオダイナミック農法でやっているところも結構あるらしいけどね。でもやっぱり手作りの農園はいい感じ。
スパークリングワインの瓶詰作業は新しい発見というか学習ができた。一度瓶詰した後に酵母と糖分を入れて瓶内の二次発酵をさせること、発酵後のオリを除去するために、最初はビール瓶のふたのようなものでふたをする。発酵が終わったら一辺ふたを開けてオリを除いてから、もう一度おなじみのコルクで栓をする。
写真はお馴染みのスパークリングワインのコルク。もちろん栓をする前。最初はこんな形だったんだね。
普通のワインのコルクより二周りくらい大きい。これをねじりながら押し入れる。
案内をしてくれたKさんは「スパークリングワインは最初から最後の一滴まで大事に味わって飲んで欲しい。ポーンとあけてザバーっとこぼしてなんてトンでもない!」と力説されていた。それもそのはず。このワイナリーでは作業のほとんどが手作業。もちろん道具ももちろん使うけど、瓶が人の手から次の人に手渡され、自然なペースでワインが出来上がる。普通のワインより3手間も4手間も余計に手がかかる。山の斜面を掘り込んだ薄暗い作業所でちょっとした時間に皆さんと話をすることができた。牧丘でブドウを育てる話をしたら皆さん応援してくれた。ありがたやありがたや。
ワインセラーは見ためは想像通りだったけど、なにより室内の香りがよかった。しっとりした湿度のある部屋にワインの香りが充満している。やっぱり香りは行かなきゃわからんね。1樽300瓶分。樽はたくさんあった。でも天使達が途中で飲んじゃうから、継ぎ足しながら進める。継ぎ足さないと空気との触れる面が大きくなるから腐敗しやすいのだそう。Kさんいわく、「オークの樽が一番いいってわけじゃない。それぞれの個性があるからいい」樽のそばには継ぎ足すためのワインが入ったステンレスの樽がおいてあった。セラーの中は年中13-15℃で一定に保たれている。
商品として売るのであれば、本当にいいものを売ろう。よくないものは長続きはしない。長続きしなければ園生たちが働く場所が長続きしない。だから商品の良し悪しに関して、知的障害者が作っていることを言い訳にすることはしないとワインつくりを始めるときに園長は誓ったそうだ。
もちろん味見をさせてもらってけど、マジで美味かった。人が紡ぐ永続性の片鱗を見た気がした。
それと、年間の生産量を増やして欲しいという要請が方々から入ったことがあったらしい。いろいろ検討をされたらしいんだけど、結論は現状維持。規模拡大は逆に農園から園生たちを締め出してしまう。草刈をする人、枝を運ぶ人、瓶を箱に詰める人、ラベルを黙々と貼る人、異物混入を黙々と監視する人、そして作業を見ながら遊ぶ人。ひとつひとつの果粒を見ながら食べたい粒を選ぶ人。選果の作業には想像しただけで気が遠くなる。すべてが上手くこなせるわけじゃないけど、それぞれの得意分野があって、それぞれの個性が生かされる場所にしたい園長の思いがあった。
金、金、金の世の中でなかなかできることじゃない。しかも世間からの評価もきちんと受けているしね。
世間からの評価はともかく牧丘もそんな関係になれたらいいと思ったよ。
お楽しみのテイスティングはお土産に2本買ったもの以外で農民ドライ(白)など6種類のワインを試させてもらった。やっぱり顔の見える食べ物がいいね。どれも体が喜んだ。農民ドライ・・なんていい名前だろう。ちなみに赤は農民ロッソ。即買い決定なり。
最後に、売店でブドウを剪定した後の枝を炭にして売っていた。一袋300円。やるなー。
藤野から電車で3時間の道程。春になってブドウの花が咲くころもう一度行ってみたい。