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2009/10/08

博士と一緒 - 養鶏見学ツアー①



友達の博士と一緒に養鶏場を二ヵ所見学した。

見学したのは神奈川県小田原のあいらんどという養鶏場、そして群馬県沼田市にある子持自然恵農場。二つとも、かつて養鶏を営んだ博士のお勧めの養鶏場だ。平飼いの自然養鶏というスタイルの中で、とても対照的な養鶏場だった。台風18号が迫りつつあるあいにくの雨中の見学ツアーだったが、とても大きな学びがあった。

一つ目の小田原の養鶏場は「発酵利用の自然養鶏」という本を書かれた笹村出さんが経営している。地域から排出される資源などを飼料として利用して養鶏を営んでいられる。おから、ふすま、そばぬか、米ぬか、鰹節の出し殻、お茶の絞りかす、みかんジュースの絞りかすなどなどくず米以外には金を掛けずに健康な鳥、生命力のある卵を育てている。鶏の健康のポイントはいろいろあろうが、そこでは好気性発酵と嫌気性発酵を組み合わせながら飼料作りを行い、鶏舎の床がすべてと常に発酵状態にしている。床をほじったらあったかい。ここでのいい卵の定義はいい雛ができる卵。
養鶏は観察だと著書に書かれている笹村さん、長年の経験によってか作業はポイントを抑えつつ、とてもおおらかに、かつ適当に見えた。おからをベースに嫌気性発酵させるサイレージ作り。乳酸菌を食べさせて鶏を病気に強く健康にするらしい。その他の穀物やたんぱく質系の飼料は好気性発酵させて雑菌を死滅させると共に卵の味を作る。発酵させることで生臭さがなくなるそうだ。
見学中に見聞きした技術的な部分の記載はさておき、感想を一言にするととても「身の丈」にあった養鶏方法だと感じた。片手間+ちょっとくらいでうまく回せる現場がちょうどいいスタンス。ニワトリ達も落ち着いていて幸せそうだ。地域ででる資源を再利用して作る卵。うまい・まずいは生業として当然コントロールするものの、地域に循環の輪を作るだけでなく、その輪の中でどんな卵ができるか、地域にも責任の一旦を背負わせるようなスタンスはとても面白いと思った。この養鶏なら自分にも出来るかも知れない。そう思わせてくれるサイトだった。

二つ目の沼田の養鶏場では養鶏のみならず農を生業にするということについて、目からうろこが落ちた。高い志や自然養鶏ノウハウ、そして価格という意味でも日本一の養鶏場かもしれない。まったく臭いがしなかった。(自分が養鶏場をきちんと評価できるとは思わないが・・・)卵一個100円。スーパーでは1個20円程度だ。どんな卵なんだ?

最初に面食らったのは、初対面の挨拶直後に質問された言葉。「養鶏を通じてなにを提供したいのか?なにを貢献したいのか?」直後は意味があまりよくわからなかった。
子持自然恵農場でのいい卵の定義は、健康な人ももっと健康にする卵。鶏が健康な人間よりさらに健康でないとそれは不可能だ。だから、誰よりも健康な鶏を育てることを実践している。人の口に入るものは、人の健康を左右する。健康を左右するということは、その人の人生を左右するということだ。だから本当に健康にこだわって養鶏をしている。案内していただいた瀬戸さんは、養鶏を通じて医者、薬剤師と同じだと教えてくれた。見てくれだけでなくて、本当に生命力のあるものを作る。生体エネルギーにあふれる独自の飼料を使い、自然の力を最大限借りることが出来るように鶏舎にこだわり、鶏の潜在能力を最大限引き出すように育て、産み疲れすることがないように産卵率を抑えている。

また、「環境」についてもいろいろ話をしてくださった。多くの人が感じているように自然環境は劣化している。その劣化した環境でできた食べ物で育てた鶏が人以上に健康になれますか?と問いかけられた。リサイクル資源で育てた鶏は、不健康な人のマイナス分をプラス方向に引き上げられたとしても、健康な人をより健康にすることはできないと断言された。だから、まず劣化した環境や畑に活力ある地力を取り戻さなければならない。生命力に溢れる土をつくること。その地力を利用する農業はみな同じ。養鶏も野菜も果樹もその媒体の一つであると語ってくれた。目に見えない生命力や生体エネルギーに目と心を開き、その自然の摂理ともいえる力を養鶏に利用している。発酵や微生物利用という観点からもう一歩踏み込んだ感じだ。感じるでなく、頭で理解しようと思うととても難解だ。

最初に質問されたこと、なにを提供したくて、なにを貢献したいのか?、彼はその「思い」がないと始まらない、思いの置き所が定まれば、技術的なやり方なんかいくらでもあるとそう言った。あれっ?PC的にはコンセプトデザインのことだ。確かに、金勘定で始める場合、健康を重視したり、安心を重視したり。それによってプロセスがずいぶん違ってくるだろう。「この人になにを提供し、どう貢献したいのか?」そういわれた時には家族のことを思った。多分今の自分はそこが根っこにあるんだろうと思う。それに瀬戸さんは「時は金なりという。でも本当は時は命なり。命がけでなにをするか。それが面白い。だから農業は面白くてやめられない」とも言っていた。そんな志をもって農業をやっている人に初めてであった。探求しているその深さを知れただけでも、とても幸せなことだ。

二つの養鶏場は対照的だが、自分の中では彼らの最終的なゴールは同じような気がする。かたや循環に重きを置きつつ、養鶏を通じた結果を現状として受け入れ、かたや理想の状態にすることを重要視している。残念なのは、結果としてそれぞれで出来た卵の質が違ってしまうということだ。地力がもっと強ければ、環境の劣化を進んでいなければ、きっとプロセスが違えど、結果は同じだっただろうと思う。まだ整理できていないが、自分は自然の循環の中で生きていることを実感できて、それによって心から安心できるようなものを提供したい。そして心と体が元気になるものを作りたい。そう思った。ボーっとしてると金稼ぎに走ってしまう自分を戒めねば。

いける状況だったら、出来れば雛を入れる春先にいずれかのサイトに1ヶ月ほど研修に行きたいと思う。ありがたくも双方とも受け入れてくれそうな感じだった。数ある養鶏場の中でこの二つを博士と見学したことは、なにやら必然のように感じている。小田原には博士と友族5人でいったのも、これも必然かな?

2 コメント:

hatidori さんのコメント...

そうか・・・

nonchan さんのコメント...

Hello!山北のNOSAKAです。
あちこち視察してるんですね。笹村さん有名人ですねー。小田原に移る前は山北で鶏飼ってたそうです。同じ足柄農の会に豚を飼ってる人がいて、海くんと祐子さんのこんびです。秋はどんぐりをもって行ってあげます。スペインにもどんぐりを食べさておいしくしている豚がいるそうです。小田原方面に来たら家にも寄ってね。

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